Shake up life! [More]

日常的な話や伺かゴーストの更新なんかをつらつら書いてる日記。

from 「Scar of Doll」.


――少女はメリーと名乗ることにした。


―――はぁ   はぁ、はぁ




私は走った。走った。走った。
――自分が望まれない子だと知ったその時に。
腕に小さなぬいぐるみを抱えて。
――何年ぶりだろう。こんな風に外に出るのは


「…誰も、私を 愛していない…」


―――気づいた両親が私を止めるには遅く。
―――私は、屋敷を飛び出したのだ




あぁ、どうして、  私は 此処に存在しているのだろう?


「ヘイディ、ねぇ…ヘイディ
…私も…………“にんぎょう”になりたいな…」
抱きしめていたぬいぐるみに語りかける。
それは私の、たった一人の友達で、親友なのだ。


「そうすればきっともう…
辛くなったり、悲しくなったり、痛くなったりはしないよね……」



その時遠くから響き渡る声を私は聞いた。
…私の時間は、屋敷を飛び出した時点で既に零れ落ち始めていたのだ。


不意に視界が開けて私は足を止める。
霧の深まった其処は、確か昔は湖だったと、記憶の片隅にあった。
…多分今も湖のはずだけど。
あぁ、ここで行き止まってしまうなら。
自ら飛び込んでしまおうか。


“にんぎょうになれたら”―――


先ほどの願いが、脳裏に蘇る。
…それは急に現実味を帯びて―――




『―――ばしゃん』



「ねぇヘイディ、私の名前をあげる。
だから私は変わるわ。


私の新しい名前は――― メリーよ」